お盆休み、連泊で岐阜にあるいつもの宿に行って来た。何年も先まで予約が一杯でなかなか取れないが、お値打ちなのが有り難い。ここは涼しくて、夜は気温が下がり吐く息が白くなる程だった。(もちろん真冬の様な寒さではないけど、湿度の関係か?) 連日の熱帯夜から解放されてぐっすり寝て、やっぱり今回も早朝の釣りは無し。昼は昼で、毎日昼寝。夕方数時間だけ宿の前で釣る。お手軽だが、そこはあまり攻められていないのか良型も出て、結構楽しめた。
「折角渓流の近くに居て毎日これでは」ということで、放流を行っていないという支流に入った。そこで釣れた魚が次の写真。
この写真では分かり難いのだが、全身が金色っぽかった。ここで釣ったアマゴはこの一匹だけだったので、他のアマゴがどうなのか分からない。
釣りは楽しめたのだが、悲しいことが一つ。予備で持っていっていた自作ロッドのティップを、いつの間にやら折ってしまっていたのだ。うーん、いい加減新しいのを作れということかいな…
(続き)
釣り終わって三人で林道を歩いていると、千葉さんのお友達の釣り人Mikamiさんが下流で釣っていたShimaneさんとともに車で迎えに来てくれた。
Mikamiさん
工房で一服した後、皆さんとお別れしてShimaneさんに花巻空港まで送って頂く。おかげ様で余裕を持って搭乗出来た。
今回の岩手釣行では千葉さん以外は初めてお会いする方ばかりでしたが、いろいろお世話になって、また話も聞かせて頂いて楽しい思い出となりました。スキルも少し向上したかも。有り難うございました。いつかまたお会い出来ることを楽しみにしています。そして千葉さん、どうも有り難うございました。
花巻空港
窓から雲を見ていると、待ち時間から考えると呆気ない程の短時間で名古屋空港に到着。夏の愛知に、現実に帰って来た。到着ゲートに向かうバスに乗るためにタラップを降りる。太陽に焼かれた滑走路に立つと、熱が肌から染込んできた。岩手にいる間ほとんど雨に泣かされていたというのに、こちらは快晴。まさに『悲しいほどお天気』だった。
(おしまい)
(続き)
「朝だぞー、起きろー」の声。その日は私が岩手を去る日だが、皆にとっても最終日で、気合いが入っている。私が一番最後だった様だ。なんせ、増水で釣りが出来ない朝が続き、これが最初で最後のチャンス。腹に何も詰める間もなく急いで準備して、支流の一つに全員で出発した。
当初、この日は釣りをするつもりじゃなかった。前日までにお腹いっぱい釣って、飛行機に間に合う列車は早朝に一本しかないのでそれに乗り、盛岡か花巻で時間潰しに観光でも、と思っていたのである。「椀子そばは一人で食べるのはちょっとな…。花巻なら賢治ゆかりの『イギリス海岸』まで歩くか。」そう考えていた…初日の釣りをするまでは。次の日の釣りの最中、どうやって最終日も釣りをするかを考え始めた。そして、帰り道なので間に合う様に空港まで送っていただけるというShimaneさんの言葉に甘えて、この日の釣りに参加しているのである。
千葉さん
まずはその支流の上流側に入る。結構良いポイントを貰うが、バラしてばかり。どうも岩手遠征中ずっと、バラしの割合が多かった。こちらの川に慣れていないというだけではなさそうである。
今回、初めてのフックでフライを巻いて来た。いつもはTMC100BLを使うところ、岩手用に貫通能力がアップしているというTMC100SP-BLを使ってみたのである。大御所の自信作らしいのだが、今はこれが自分と相性が悪いのではないかと疑っている。フック・ポイントの鋭さが仇となって、『皮一枚』という感じで浅く掛かっている気がするのだ。貴方はそんなことはないですか?
下流へ移動。魚止めの滝まで釣り上る。入って直ぐは日が射していて、それが良かったのか、続けて三匹キャッチ。パターンをつかんだかとも思ったがその後は駄目で、そのままお昼近くに滝に到着。これで憧れの地、岩手での釣りが終わった。思い描いていた通りとはいかなかったけど精一杯の四日間。ここは静かに目を閉じて深く息をするところだが、実際にはそんなセンチメンタルな気分ではなく、「ま、間に合うよね飛行機…」ということで頭がいっぱいだった。
(続く)
(続き)
翌朝。Takadaさんが起き上がって一階に降りて行く。「お、釣りに行くのかな?」と自分も起きて階下へ。さて川はどうなったのかとみると、カップにすくって目覚ましのカフェオレにしたい様な色合いだ。二人で近くの支流も見に行くが、そちらも「こりゃ駄目だよね」という感じで、工房に引き返した。
TakadaさんはKawagarasu工法でロッドを作っている『兄弟弟子』で、見せてもらった竿はとても丁寧な造りだった。うーん、見習わなくては。釣りも出来ないことだし、お互いのロッドや、Takadaさんの見事なオール竹製のランディング・ネットのこと、日頃の釣りのことなどを話す。そうこうしているうちに意外に早く、前日の午後に合流したShimaneさんが起きてくる。ウイスキーの減り具合から推察するに、(殆どをもう一方が飲んだにしても時間的に)千葉さんはまだ暫くは無理だろう。その間にShimaneさんと食料確保を兼ねて車で各支流を覗きに行くが、道から見える川はどこもカフェオレだ。
千葉さんにこの状況でのお勧め場所を訊く。少しでも水が引いてからとお昼も随分過ぎてから、千葉さん以外の、Shimaneさん、Takadaさん、私の三人で前日の支流に繰り出す。最初は本流に近い辺りを、その後に前日釣った所から上流を釣り上がる。水位が下がったという気はしないが、雨が降っていない分前向きな気持ちになる。魚も前日よりも反応がいい様だ。ぽつぽつ上がる。ただ、どうも魚たちはまだ『避難中』のままなのではないか、という印象を受けた。
Takadaさん
この川の通常の水の高さはどの位なのだろう。自分の感覚ではこのときでも特別に高い様には感じられないが、今まで降った雨の量を考えると、平水は相当低いのではないかと思った。(地元の方々、どうでしょう?) 今、岩手の渓流の画像が出ているWebページをみると、ポイントとして紹介されている所がかなり浅い気がする。緯度の差や釣り人によるプレッシャーの低さが、そんな違いになって現れるのか。今回の遠征は雨によって釣果が伸びなかったかの様に書いているが、雨が降らなかったとしたら、果たしてどうなったのだろうか。初日の経験を生かして対応出来たのか、それとも…。
Shimaneさんの後ろ姿
Shimaneさんは、きちんと『尺』の結果を出していた。お見事。
(続く)
(続き)
渓流釣りは早朝に行うのがセオリーなのだが、日帰りのときは9時頃に家を出るし、泊まりのときも山の宿の夜は涼しく、いつのも寝苦しい熱帯夜から解放されて熟睡してしまい、結局朝はゆっくりというのがいつもの私のパターンだ。しかし今回は前日のショックが効いていた様で、珍しく6時に目が覚めた。同じポイントでやり直すつもりだったのだが −−
眠るときには上がっていた雨が降っている。川の様子を見に行くと濁りが入り水位も上がっている。慌てて準備して近い場所に入るがだんだん濁りがひどくなり、勝手が分からない川なので釣りを断念して引き上げた。結局その後もこの川で釣りが出来る様にはならず、『やり直し』は今度岩手を訪れるまでお預けとなった。
支流に入って釣果を上げた地元の坂本さんと神奈川から来たTakadaさんが合流。坂本さんが入った支流に向かうが、濁り、水位共に厳しく、雨の影響が少ないと思われる他の支流に向かう。
ヤマメ
支流は川幅が狭いことと増水で狙えるポイントが限られることから、前日の様な『訳の分からなさ』は感じなかったものの苦戦は相変わらずで、「自分の腕でも岩手に行けば」などという想いは完全に打ち砕かれていった。
釣り終わって工房へ引き上げ
(続く)
(続き)
花巻空港からバスで盛岡駅に向かった。花巻ではかなり強く降っていた雨が、高速道路を北上するうちに弱くなっていく。これなら今日から釣りが出来そうだと一安心。盛岡駅で千葉さんに拾ってもらって、そのままイベント会場であり、この釣行の基地となる工房に向かう。一年ぶりの再会。いろいろ喋っているうちに到着した。
雨は小雨。夕暮れまでにはまだ時間がある。急いで釣りの支度をして千葉さんに付いて川に入る。そこは沢山のゲストを案内してきた、高い実績を持つ一級ポイントに違いない。「さあどうぞ」と言われて川に立つが…。
憧れの岩手の渓流に遠路遥々やって来たというのに、何処にフライを投げればいいのか、全くイメージが浮かんでこないのである。この違和感は何なのだろうか。たぶん、水深、水流の速度、流れの落差、川岸の様子や、川の中や水面に出ている石の様子などのそれらの組み合わせが、自分が今まで釣りをして来た場所のそれと違っていて、今までの『引出し』が使えないのだ。
この川を知り尽くしている千葉さんが「ここで」と言う以上、魚が居ないはずが無い。だから冷静に考えれば、何処に投げて良いのか分からないのなら、あらゆる所に投げれば良いのである。しかしこの時は、遠征の興奮と、その日からお世話になる千葉さんの期待に何とか応えたいという余計な思いから、『頭がドングリ』状態に陥っていた。その時の様子を見ていた千葉さんは「丁寧な釣りという印象を受けた」と書いておられたが、あれは丁寧にポイントを探っていたのではなく、思考回路がパニックを起こし、壊れた玩具の様に同じ行動を繰り返していただけなのである。
それを見かねた千葉さんが、岸際を攻める様にアドバイスをしてくれる。すぐ後に自ら有効性を実証することになったその助言も、この哀れな釣り人の頭をクリアにしてくれた訳ではなかった。そこのポイントは岸際を含めてかなり浅いのである。この川の魚はこんなところに? しかし今まで自分が投げた場所から魚が出ない以上、そのアドバイスにすがるしかない。何回かその浅い流れを流すと、岩手最初の魚は私のフライに出た。 何とか一匹釣り上げ、ホッとした。しかし、それですっきりしたかと言えばむしろ逆だ。釣れたイワナが良型だったからだ。自分の感覚では、こういうポイントから出るのはかなり小さい魚だ。もちろんアドバイスを疑っていた訳ではないが、実際釣れてしまい、戸惑いが大きくなった。
釣りまくっている千葉さんに対して、この日の私の釣果は結局その一匹のみ。『パラダイス』に立ちながら、自分の釣りがまったく通用しない。明日以降、チャレンジングな釣りを求められることは明らかだった。
(続く)
勢いで、竿作りを教えてもらっている Kawagarasu Craft の千葉さん主催のイベントに合わせて、岩手へ釣りに行くことにした。釣れないフライ・フィッシャーにとって、釣り雑誌でパラダイスとして紹介される東北の渓流は憧れの地だ。私もそんな一人だったが、突然「いつか東北の渓で釣りをしたい」という願いがかなう日が来たのである。
飛行機は梅雨も明けてすっかり夏になった愛知の名古屋空港を、岩手に向けて離陸した。岩手の空港は花巻にあるのだけれど、私は盛岡にあるものだとずっと思い込んでいた。それは何故か。松任谷由実の歌の所為なのである。
アルバム『悲しいほどお天気』に収められている『緑の町に舞い降りて』の中に
着陸間近のイヤホーンが
お天気知らせるささやき
MORIOKAというその響きが
ロシア語みたいだった
と歌われている。
どうして盛岡になっているのかが書かれているページを見つけた。
・緑の町に舞い降りて
空港の場所がフィクションなんて、さすがは大御所・松任谷由実である。
花巻空港に着陸態勢に入ると窓に雨が付き始めた。一大決心で岩手にやって来たものの、天気は歓迎してくれない様だ。梅雨前線の活動が活発になり、この日から「悲しいほどお天気」なんてとても言えない日々が始まったのである。
花巻から盛岡に向かうバスから
(続く)
もう数週間前になるが、新聞の広告欄の『雨鱒の川』という言葉が目に止まった。漢字で書かれているのを見ることが少ないので迂闊にも「『雨鱒』ってどんなマス?」と思ってしまったのだが、つまり『アメマス』だと気が付いた。(そのまんまなんだけども。)
その広告は、9月に公開される映画『雨鱒の川』の、原作の本のものだったと思う。
アメマスとはどんな魚か。分かってないのは自分だけなのかもしれないが、渓流釣りをする人はよく耳にするであろうその魚をきちんと説明することは存外難しい。私の理解ではアメマスは、イワナであるとも言えるし、(私の釣っている)イワナに近い別の魚とも言える。また、海に下ったイワナであるとも、海に下る性質を持ったイワナだとも言うことも出来る。
日本の渓流魚(特にイワナ)は、他の水系の河川の個体と隔離されて世代を重ねたことにより、地域によって体の模様などに違いが生じている。また、鮭と同様に本来は海と川を行き来する性質を持っていたものが、氷河期の終焉といった気象条件の変化で必ず海に下るということではなくなり、地域によりその行動をとる割合が異なるといったことも起きた。別々の地域の人はそれぞれ独自に魚の呼び名を決めるだろうし、他の地域の魚と外見上や性質に違いがあれば、別物と認識されるのは自然である。それで、イワナには呼び名が沢山ある。
学術的にもそれらを別々の魚と扱うかどうかには揺らぎがあるが、現在はアメマスはイワナの降海型(つまりイワナ)とされる。釣り人的感覚では、海に下ることが多いや北海道や一部東北の地域のイワナはアメマスという感じではないだろうか。(とは書いたものの、地域的に馴染みが無く、「もし降海しなかったら?」とすっきりしない。意見を訊かせてもらえるとうれしいです。)
この『雨鱒の川』では、アメマスは主人公達と話が出来るらしい。魚種の名称が何であれ、確かにイワナの仲間たちは喋り出しそうな雰囲気を持っている。顔つきも個体毎の個性を感じる。サイボーグっぽいアマゴ/ヤマメよりもイワナを釣るのは楽しく、また申し訳ない気もする。
釣りをしていると日焼けをする。暑くなってきたからといってTシャツなんかでいると、大変なことに。それで真夏でも長袖で釣りをしているのだが、手の甲は露出したままなのでしっかり焼ける。今年も既にヒリヒリを味わって色素が増しており、もう真っ赤にはならないとは思うが、いい加減こんがりキツネ色にする年頃でもないでしょうということで、手を打つことにした。
日焼け対策かどうか知らないが、夏の時期の釣りである鮎の友釣りをしている人達は、専用の手袋をしている様だ。フライフィッシャーのファッション(?)としては、手がかじかむ時期にするのは珍しくないが、夏に装着するグローブみたいな物の広告は見たことが無い様な気がする。
とりあえず手持ちのもので試してみようと、指先が切ってあるデザインの、モンベル製の薄手のフリース生地の手袋をしてみる。日光を遮るためか意外と暑くない。更に念入りに、気化熱で手を冷却しようと手袋に吸水させてみたら、なかなか良かった。
ただ、難点は左手のフィギュア・エイトを解くときの感触が分かりにくいこと。ロッドを握る右手の方は、まぁこれでも良いかなと思った。
鮎師の手袋の方が良いよとか、自分はこうしているなんてのが有ったら、教えて下さい。
釣りに行く前の日の夜は、泥縄的にフライを巻いていることが多い。しかし今回は靴を直さなくては。
渓流のフライ・フィッシングに使う靴は『ウェーディング・シューズ』と言って、大抵は底にフエルトが張ってある。今使っているのは靴底をフエルトとゴムのソールに交換出来る様になっているもので、足型も合うようで気に入っているのだが、ワンシーズン保たずに縫い目が解れてきてしまった。この靴ならフエルトがすり減っても交換が簡単と考えていたのに、こんなに早く本体が駄目になってもらっては困るので、傷口が広がる前に自分で縫って修繕する。
使ってみたところ、修理は上手くいったみたい。
釣りから帰ってくると丁度、雨が降り出した。『梅雨の中休み』も終わった様だ。