『雨鱒の川』
もう数週間前になるが、新聞の広告欄の『雨鱒の川』という言葉が目に止まった。漢字で書かれているのを見ることが少ないので迂闊にも「『雨鱒』ってどんなマス?」と思ってしまったのだが、つまり『アメマス』だと気が付いた。(そのまんまなんだけども。)
その広告は、9月に公開される映画『雨鱒の川』の、原作の本のものだったと思う。
アメマスとはどんな魚か。分かってないのは自分だけなのかもしれないが、渓流釣りをする人はよく耳にするであろうその魚をきちんと説明することは存外難しい。私の理解ではアメマスは、イワナであるとも言えるし、(私の釣っている)イワナに近い別の魚とも言える。また、海に下ったイワナであるとも、海に下る性質を持ったイワナだとも言うことも出来る。
日本の渓流魚(特にイワナ)は、他の水系の河川の個体と隔離されて世代を重ねたことにより、地域によって体の模様などに違いが生じている。また、鮭と同様に本来は海と川を行き来する性質を持っていたものが、氷河期の終焉といった気象条件の変化で必ず海に下るということではなくなり、地域によりその行動をとる割合が異なるといったことも起きた。別々の地域の人はそれぞれ独自に魚の呼び名を決めるだろうし、他の地域の魚と外見上や性質に違いがあれば、別物と認識されるのは自然である。それで、イワナには呼び名が沢山ある。
学術的にもそれらを別々の魚と扱うかどうかには揺らぎがあるが、現在はアメマスはイワナの降海型(つまりイワナ)とされる。釣り人的感覚では、海に下ることが多いや北海道や一部東北の地域のイワナはアメマスという感じではないだろうか。(とは書いたものの、地域的に馴染みが無く、「もし降海しなかったら?」とすっきりしない。意見を訊かせてもらえるとうれしいです。)
この『雨鱒の川』では、アメマスは主人公達と話が出来るらしい。魚種の名称が何であれ、確かにイワナの仲間たちは喋り出しそうな雰囲気を持っている。顔つきも個体毎の個性を感じる。サイボーグっぽいアマゴ/ヤマメよりもイワナを釣るのは楽しく、また申し訳ない気もする。