TRAVEL

石垣島ソルト F. F. 外道戦記(5) 到達

(続き) 翌日。ホテルで朝食を取り、リーフエッジでの釣りを目指して出発する。干潮の時間は11時半ぐらいなので、島の西側を彼方此方寄りながら昨日と同じ海岸に。昨日よりも潮が引き、浅過ぎてもうイノーの中では釣りは出来ない程だ。 今日こそは大物をと思いながら歩いていく。そして念願のリーフエッジへ到着。波頭が砕ける様子が見えていた宮古島とは違い、海面はとても穏かだ。 風が強くて自分のスキルではとてもフライ・キャスティングにならないが、幸いにも追い風なのでラインを空中に出せていれば風が前に運んでくれる。それは良いとして…… 水深がさっぱり分らない。今回持って来たのはインターミディエイト・ラインで、このラインと然程重くないフライでは上っ面を泳がせるのが精一杯である。「リーフエッジから投げれば大きい魚がドカーンと!」ぐらいしか考えていなかったが、実際に来てみると、魚がフライを見てくれるのか不安になってきた。 (続く)

石垣島ソルト F. F. 外道戦記(4) 新顔

(続き) まだ二回しか釣っていないが、どうもエソは浅い砂地の場所に居る様だ。この魚が釣れるということは、岩礁地帯に居る(であろう)イシミーバイは釣れない気がする。少しでも深くて、イシミーバイが居そうなところを探ると手応えが。今度は結構引く。おぉ!居たのだね、と寄せてくると、あれっ? 知らない魚だ。あなたは誰ですか。 そうこうしている内に待ち合わせした人がやってきて、この日の釣りはここまでとなった。先のエソとともに釣った魚を見せたが、「ベラの仲間だね。んー… 逃してあげましょうねー」と言われてしまった。美味しい魚ではないらしい。 旅から帰ってから調べて分ったのだけど、この魚の名は「ミツバモチノウオ」だそうだ。それほど大きくなる魚ではないが、同じモチノウオの仲間には「ナポレオン・フィッシュ」の呼び名で知られる、2mを超すメガネモチノウオがいる。モチノウオはベラ科。ベラというと「外道」(狙っていないのに釣れた魚)の代表という印象であるが、こいつは自分のベラのイメージとはかなり違っている。 (続く)

石垣島ソルト F. F. 外道戦記(3) 再会

(続き) 石垣島二日目。この日、島在住の人と会うことになっていて、西回りで島の北側の海岸に出掛けた。そこはイノー(ラグーン、礁池)が浅くてリーフ・エッジまでが近く、自分の釣りに向いていると目を付けていた場所でもある。釣りをするのは翌日にして先ずは下見だけするつもりだったが、待合せの時間より早く着いたので、じゃあ少しやってみるかと竿を繋いで海に入る。 「夢のポイント」に実際に来てみるとイノーは思ったより起伏がなくて、イシミーバイが沢山潜んでいる様には見えない。ちょっとガッカリ。 珊瑚の周りにフライを泳がせることを暫く続けていると、不意に魚影が現われてフライに向けて走った。合せると手応えが。良し! ……ん? あまり引かないな。これはイシミーバイじゃない。寄せてくると……。あなた、前にもお会いしましたよね。 前よりは大きくなったけど、沖縄のエソはやっぱり目が赤かった。 (続く)

石垣島ソルト F. F. 外道戦記(2) 妄想と現実

(続き) ホテルのすぐ傍に釣具屋があることは調べてあった。現地に着いて、早速寄ってみる。石垣港が目の前なので夜釣りでイカでもと思って、スピニングのパック・ロッドも持って来ていた。店の人に夜は港のどのあたりで釣りをしてるかと訊ねてみたら、夜は釣りはしていないと言われてしまった。えっ、そうなの? 石垣港は結構大きい。ホテルの近くは船がたくさん係留された潮通しが悪そうな場所で、ここに大物がいるという様な感じではなかった。かなり移動しないと良さそうな所に行けないみたいだ。旅行に出掛ける前に「もしホテルの前がすごく良いポイントだったらチャンスを逃してしまう」と想像を逞しくして持ち込んだ餌木(エギ)は、結局使うことはなかった。(実際のところは、夜は呑んでしまうのでそれから釣りに行くことはよっぽどないわけだが。) 竹富島に行くときに船から見た限りでは、石垣港の埠頭で釣りをしている人はほとんど居なかった。件の釣具屋にも餌木は沢山売っていたから地元の人もエギングをしているんだろうけど、日中に船上か沖堤でやっているのだろうか。 (続く)

石垣島ソルト F. F. 外道戦記(1) 再挑戦

以前、宮古島のリーフでイシミーバイ(カンモンハタ)を釣った際にはリーフエッジまで辿り着けず、あの先にフライを投げれば超大物、例えば GT が掛ったんじゃないかという想いが心の中に止まり続けていた。いつか沖縄で試してみたい、というか直ぐにまた行こうと考えていた。 去年、石垣に行こうという話があり、釣りの準備も少し始めていたのだが、いろいろあってその話は流れてしまった。計画が復活して宿のキャンセル待ちをしているところで、あの東日本大震災が起きた。辛い思いをされている人が沢山いて、心痛めた日本社会は自粛ムードに包まれたが、自分は旅行をすることにした。 最初に宿をとるのに苦労したのは、計画した日がちょうどトライアスロンの国際大会の日程と重なっており、ホテルなどが押えられていたかららしい。大会は実施されたので国際大会や一般の部に出場するアスリートは島に来ていたが、日本人は「自粛」で、外国人は福島原発の事故による放射能を恐れて旅行を取り止めている様子で、観光客は疎らだった。現地の方に聞いたところでは、五月以降の宿の予約がほとんど入ってないらしい。 さて、イシミーバイやガーラを目指した釣行がどんな結果であったかは題名を見れば想像が付いてしまう訳だが、それはそれで楽しいものではあった。沖縄の海でフライフィッシングをするということ自体が冒険であり、何かが釣れてくれれば「新しい体験」をすることになる。今度行ったときには、また違う魚を釣ってみたい。(本命も釣りたい。) (続く)