ガイドブックを見る限り宮古島の南部は絶壁が続き、その絶壁を波が洗っているらしく、自分の釣りのポイントがそこにあるのか心配だった。それで北部でイシミーバイを釣るという目的を果たすことを目論んでいたが、そうはいかなかった。
釣りが出来る日は残り一日。前日に食堂で一緒だった人に聞いたところでは、島の東側にはシュノーケリングに良い、遠浅の海岸があるらしい。南の海岸も絶壁続きであってもビーチがあるから、まぁ何とかなるだろう。平良港前から島を横断して東海岸側に出て、南下を始める。島の西や北側とは違って道が海面よりかなり上にあり、少し内寄りなため海が見えない。地元の人は降り口を知っていて海岸に行けるのかもしれないが、我々には分らないのでそのまま南下が続く。
そのうち車を止められる展望台があったので、そこで釣具屋弁当を食べた。そこから下を覗くと、とても美味しそうなリーフが見えるが、降りられそうなところが全く無い。イシミーバイ、いっぱい居るんだろうなぁ。指を銜えて……じゃなくて、弁当を頬張りながら眺めるしかなかった。
絶壁の海岸でも釣りに良さそうなリーフがちゃんとあることは分った。とにかく何処かで降りなければ。教えてもらったビーチにも行ってみるが、シュノーケリング・グッズのレンタル屋さんが常駐していて、人も一杯。流石にここだと浮きまくり。それと、ビーチだからなのか、期待しているリーフとは少し違う様な……。
もう少し先に進み、漁港の一つで釣ることにした。今日も腰までのウェーディング。キャスト、リトリーブを繰り返しながら少しずつ沖へ向う。海は凄い透明度なのだが強風で海面が激しく波立って動いて、足下でさえ底の様子がはっきりしない。リーフの知識が無い自分には攻略ポイントが分らないが、ぼんやりと色合いが変わっている場所に海底に変化があることを期待して狙うものの反応なし。でも、希望はある。
この場所を選んだのは水面から出た岩があったからだ。これなら沖縄の釣りに不慣れでも、根魚系であるイシミーバイが居る場所を予想出来る。少し沖の岩の周りを狙っていると、フライを引き寄せることが出来なくなった。根掛かりした様な感触だ。フライを残すと怪我をする人が出ないとも限らない。外れないかぐいぐい引いていると、一度だけ動いた様な……。これはひょっとすると……。
フライの針は「返し」を潰してあるが、ここで賭けに出ることにした。他に手もないしね。ラインのテンションを緩め、秒読み開始。1、2、3、4、5。ここで「合わせ」をかける。根掛かりとは異なる生命感がある手応え! やはり魚がフライを銜えて潜り込んでいたのだ。引っ張られなくなったので根から出て来た。前日の魚たちとは違い、8番ロッドを曲げる力がある。期待を抱きつつ引き寄せる。そして、とうとうこの時がやって来た。イシミーバイだ。
(つづく)
というわけで、なかなか朝食に在り付けなかったんだけど、そういえば去年の那覇でも似た様な感じだった。出掛ける前にホテルで食べてくればよかったのだが、なんとなく、ホテルで食べると面白い食べ物との出会いの機会が一回減ってしまう気がして、つい避けてしまう。
車で出発する前、ホテル近辺を散歩していたら釣具屋があって、朝から開いていた。中に入ってみると、何だか不思議な品揃えで、釣具の他にホウキなどの日用雑貨が沢山並び、お菓子やおにぎり、弁当も売っていた。多分ここの客は、釣具や餌と一緒に弁当も買って、船で釣りに出掛けるのだろう。このとき炊き込みご飯のおにぎりなどを少し買っていたので、「うちなーじかん」の開店まで腹が持ったのだった。
このおにぎりが、とても美味しかった。安いし。それで次の日から、先ずここで朝食の弁当を買ってから出発する様になった。釣人だけを相手に弁当を作っていて商売が成り立つとも思えないし、釣具屋以外にダイビング・ツアーにも出発前に配達されるのだろうか。素朴な感じなんだけど、パパイヤのサラダとか、入っているものが沖縄らしくて面白い。コンビニでも、どんな弁当を売っているのか見てくれば良かったな。
(つづく)
道具も沢山持ち込んで釣る気満々なのだが、スケジュール的には「釣り」はあくまで島を観光しながらちょっと時間を貰ってやってみるということであって、浜にずっとへばりついている訳にもいかない。丁度大潮で、昼前の潮が一番引いた頃に遠浅のリーフに居られれば、思い描いた様な釣りが出来るはずだ。
この日は北方面に向うことになった。朝食を食べられそうな店が見つからないので、10時頃にでもガイドブックに載っている店で食べるつもりで宿を出発。時々海に降りて様子を見てみるのだが、海岸の様子がどうも予想と違う。結構すぐに深くなる様だ。更に潮が引いたら様子が違ってくるんだろうか。
目当ての店に着くが、閉まっている。目の前から電話をかけてみても出ない。段々と予定が狂って来る。更に先へ進み、他の店に着くが未だ開店していなかった。訊くと開けるのは11時からだとか。自分一人だけなら朝飯も昼飯も抜いて釣り優先にするところだがそういう訳にもいかず、先ず池間島まで行って戻ってくることにした。
11時前に到着。さあ急いで食べて、いよいよ勝負だと思ったら、今度は11時30分開店だと言う。「うちなーじかん」というやつですね、わかります。なかなか釣り始められない。やっと食事にありつき、これから良さそうなところを探していると潮が満ちてしまいそうで、もうお店のすぐ横で釣ることにした。
やっぱりここも想像とは違う。水中にあまり起伏がない様子。果たしてイシミーバイは居るのだろうか。不安ながらも釣りを続けていると、ん? 手に微かな振動が。
小さい……。まぁ兎に角、ソルトウォーター・フライフィッシングの最初の釣果である。これは、沖縄で「エソ」と呼ばれる魚らしい。こちらでエソ(マエソ)と呼ばれる魚とはちょっと違う気もするが。何かトラギスっぽくもある。でも目が赤くて怖いよ。結構大きくなる魚の様で、こいつはその赤ん坊というところか。
まぁ想定外の魚でも、釣れないよりはずっと良い。今度は本命を、とキャストを繰り返すが、後が続かない。今日は諦めて上がるかと思っていると、また弱々しい手応えが。
サイズアップしたにはしたけど……。流石は沖縄、釣れる魚がいちいち不思議生物。この魚は「アオヤガラ」。長い顔の先っぽにあまり大きくない口がある。後で知ったけど、こちらの地元でも釣れる魚らしい。
この日釣れたのはこの二匹だけ。本命のイシミーバイ(や、ガーラや、タマンや、モンガラカワハギや……)を釣る望みは翌日に持ち越されたのであった。
(つづく)
今回の装備について一通り説明しようと書き始めたが、読んでも面白くなさそうなので止めた。代わりに、リーダーとフライについてだけ書くことにする。
リーダーは最初、既製品の0Xから3Xのテーパード・リーダーをいくつか買ってみた。しかし海の魚に適当なのか自信が持てない。そこで宮古島でフィッシング・ガイドをしているLeoさんのページを参考に自作することにした。そういえば、ノッテッド・リーダーを作るのは初めてだ。
そのページはラインの太さをポンドで書いてあるので、4lb = 1号 の計算でフロロのラインを買って来て、
10号(1.5m) − 4号(70cm) − 8号(20cm)
のリーダーを作ったが……「何を釣るんだっけ? マグロ?」という代物が出来上がる。果たして20cm程度の魚がこんなリーダーの先についているフライを喰ってくれるんだろうか。そのページのポンド指定には幅があるし、自分の4lb = 1号の解釈が合っているのかも気になったが、悩んでいても仕様がないので、「現地のガイドさんの経験から生み出されたリーダーだ。海の魚は鋭い歯を持っているものが多いし、リーフの釣りは根ずれに強い仕掛けが求められるのだろう……多分」と言い聞かせ4本作ってみた。(実際に釣りをした後にリーダーを見ると、鉋で削ったみたいにささくれている。)
フライは、クレイジーチャーリーが主で、白、オレンジ、赤、ピンク、ゴールド系を用意した。リーフ内の釣りということで、根掛かりが心配された。フライのロスト対策には沢山巻いていけばいいのだが、珊瑚礁に針を残して来ると、それで怪我をする人も出かねない。極力回収するつもりではあるけども、絶対とは言えないので根掛かりを出来るだけ抑えたかった。
沖縄のフライフィッシングのページをいろいろ調べていて、面白いフライが載っているページを見つけた。
・LoveFish LoveFishing > ウチナー美ら海毛針釣り紀行 > 島フライ?
ワーム用フックのオフセット部を利用してウィードガードを取り付けた、クレイジーチャーリー系のフライ。確かにこれはとても良さそう。真似をしていくつか巻いて、持っていくことにした。(今回釣りをした時間は合計4時間程度で短かったこともあるだろうが、根掛かりによってロストしたフライは無かった。やはりこのデザインは有効だったと思う。)
(つづく)
宮古島に行かないかという誘いがあって、どうしたものかなと考えた。ダイビング・スポットとしてとても良いところとは聞いていたけども、それ以上の知識が無くて、マリン・スポーツに無縁な身としては触手が動かなかった。景色はとても良いらしいけど、特に有名な歴史的名所旧跡があるという訳でもなさそうだし。日頃からぼんやりしているものだから、「何も無いところでのんびり過ごす」という願望も特に無い。……まてよ、忙しく観光する必要がないということは ———
沖縄には去年はじめて行ったけど、そう言えば未だ実現出来ていないことがあったのだった。釣り。出来れば海でフライ・フィッシングをしてみたい。沖縄では、こちらでは考えられないサイズの魚が岸から釣れるらしい。ガーラやタマン、そういう大物を狙うのも良いだろう。でも、それ以外に釣ってみたい魚がある。イシミーバイ(標準和名は「カンモンハタ」)だ。
イシミーバイは沖縄ではとても一般的な魚で、最大でも30cm程度までしか大きくならないうえに釣り難い魚でもないので、ないちゃーが「イシミーバイを釣りに来たのです」と言えば、何故わざわざと変な顔をされるかもしれない。この魚を釣りたいと思うのは、フライフィッシングを始めた頃に買った雑誌に載っていた、珊瑚礁でイシミーバイを釣る記事の所為だ。
1994年10月号のフライフィッシャー誌の「コーラルウォーターのなかで…… 夏に向う沖縄での思い出」という、たった4ページの記事。潮が引いて膝下程度の深さになったリーフ、クレイジーチャーリーやオリジナルフライの写真が並ぶ。渓流魚を釣るのとはフィールドも、使用するフライも全然違う。そして釣れる魚も。記者が釣り上げたミーバイ(イシミーバイ)の写真に付けられたキャプションにはこう書かれている。
わずか10数cmだがこの顔の風格といい、根に張り付くパワーといい、れっきとしたファイターである。これから晩秋にかけても楽しめるターゲットだ
この記事は心の奥深く沈降して潜み続け、14年経った今、我を宮古島へ向わせた。
(つづく)
最近、釣り雑誌は買わないどころか、立ち読みすることもほとんどないので気が付くのが遅れてしまった。名古屋のバンブー・ロッドビルダー、吉田さんが『Fly Fisher』誌にドドーンと登場している模様。久しぶりに買いに行かなくちゃ。
吉田氏と吉田氏のロッドを知る者としてはとても嬉しいことである。そして、『Fly Fishier』編集部に一言申し上げたい。「取り上げるのが遅いよ。今まで何してたのさ。」
これから益々注目され、日本のフライフィッシャーで吉田幸弘を知らぬ者はいなくなってゆくだろう。あんまり無理しないで下さいね、って言ってもあんまり意味が無い気もしますが、一応言っときます。
…何故か、栗。
また来シーズン。
一年ぶりの場所に行ってきた。結構、水量が多い。この川は増水したときに良い思いをしたことが無い。今回もやっぱり駄目でした。可愛いチビイワナが、多分仕方なく釣れてくれただけで。
もうすぐ、今シーズンも終わりですね。あなたは良い釣りが出来ましたか?
多分、二年ぶりにフライを巻いた。岩手遠征の前に巻いたものを(ゴミの様になるまで)ずーっと使っていたのだが、先日の管理釣り場で沢山失ってしまい、とうとう。
あまりに久しぶりだったので、フライのバランスが変。