宮古島ソルト F. F. 紀行(5) ラストチャンス

ガイドブックを見る限り宮古島の南部は絶壁が続き、その絶壁を波が洗っているらしく、自分の釣りのポイントがそこにあるのか心配だった。それで北部でイシミーバイを釣るという目的を果たすことを目論んでいたが、そうはいかなかった。

釣りが出来る日は残り一日。前日に食堂で一緒だった人に聞いたところでは、島の東側にはシュノーケリングに良い、遠浅の海岸があるらしい。南の海岸も絶壁続きであってもビーチがあるから、まぁ何とかなるだろう。平良港前から島を横断して東海岸側に出て、南下を始める。島の西や北側とは違って道が海面よりかなり上にあり、少し内寄りなため海が見えない。地元の人は降り口を知っていて海岸に行けるのかもしれないが、我々には分らないのでそのまま南下が続く。

そのうち車を止められる展望台があったので、そこで釣具屋弁当を食べた。そこから下を覗くと、とても美味しそうなリーフが見えるが、降りられそうなところが全く無い。イシミーバイ、いっぱい居るんだろうなぁ。指を銜えて……じゃなくて、弁当を頬張りながら眺めるしかなかった。
 
 

東海岸のリーフ


 
 
絶壁の海岸でも釣りに良さそうなリーフがちゃんとあることは分った。とにかく何処かで降りなければ。教えてもらったビーチにも行ってみるが、シュノーケリング・グッズのレンタル屋さんが常駐していて、人も一杯。流石にここだと浮きまくり。それと、ビーチだからなのか、期待しているリーフとは少し違う様な……。

もう少し先に進み、漁港の一つで釣ることにした。今日も腰までのウェーディング。キャスト、リトリーブを繰り返しながら少しずつ沖へ向う。海は凄い透明度なのだが強風で海面が激しく波立って動いて、足下でさえ底の様子がはっきりしない。リーフの知識が無い自分には攻略ポイントが分らないが、ぼんやりと色合いが変わっている場所に海底に変化があることを期待して狙うものの反応なし。でも、希望はある。

この場所を選んだのは水面から出た岩があったからだ。これなら沖縄の釣りに不慣れでも、根魚系であるイシミーバイが居る場所を予想出来る。少し沖の岩の周りを狙っていると、フライを引き寄せることが出来なくなった。根掛かりした様な感触だ。フライを残すと怪我をする人が出ないとも限らない。外れないかぐいぐい引いていると、一度だけ動いた様な……。これはひょっとすると……。

フライの針は「返し」を潰してあるが、ここで賭けに出ることにした。他に手もないしね。ラインのテンションを緩め、秒読み開始。1、2、3、4、5。ここで「合わせ」をかける。根掛かりとは異なる生命感がある手応え! やはり魚がフライを銜えて潜り込んでいたのだ。引っ張られなくなったので根から出て来た。前日の魚たちとは違い、8番ロッドを曲げる力がある。期待を抱きつつ引き寄せる。そして、とうとうこの時がやって来た。イシミーバイだ。
 
 

イシミーバイ


 
 
(つづく)