宮古島ソルト F. F. 紀行(1) 出発


飛行機からの景色




 
宮古島に行かないかという誘いがあって、どうしたものかなと考えた。ダイビング・スポットとしてとても良いところとは聞いていたけども、それ以上の知識が無くて、マリン・スポーツに無縁な身としては触手が動かなかった。景色はとても良いらしいけど、特に有名な歴史的名所旧跡があるという訳でもなさそうだし。日頃からぼんやりしているものだから、「何も無いところでのんびり過ごす」という願望も特に無い。……まてよ、忙しく観光する必要がないということは ———

沖縄には去年はじめて行ったけど、そう言えば未だ実現出来ていないことがあったのだった。釣り。出来れば海でフライ・フィッシングをしてみたい。沖縄では、こちらでは考えられないサイズの魚が岸から釣れるらしい。ガーラやタマン、そういう大物を狙うのも良いだろう。でも、それ以外に釣ってみたい魚がある。イシミーバイ(標準和名は「カンモンハタ」)だ。

イシミーバイは沖縄ではとても一般的な魚で、最大でも30cm程度までしか大きくならないうえに釣り難い魚でもないので、ないちゃーが「イシミーバイを釣りに来たのです」と言えば、何故わざわざと変な顔をされるかもしれない。この魚を釣りたいと思うのは、フライフィッシングを始めた頃に買った雑誌に載っていた、珊瑚礁でイシミーバイを釣る記事の所為だ。

1994年10月号のフライフィッシャー誌の「コーラルウォーターのなかで…… 夏に向う沖縄での思い出」という、たった4ページの記事。潮が引いて膝下程度の深さになったリーフ、クレイジーチャーリーやオリジナルフライの写真が並ぶ。渓流魚を釣るのとはフィールドも、使用するフライも全然違う。そして釣れる魚も。記者が釣り上げたミーバイ(イシミーバイ)の写真に付けられたキャプションにはこう書かれている。

わずか10数cmだがこの顔の風格といい、根に張り付くパワーといい、れっきとしたファイターである。これから晩秋にかけても楽しめるターゲットだ



この記事は心の奥深く沈降して潜み続け、14年経った今、我を宮古島へ向わせた。

 
(つづく)