今年初めてフライを巻いた。もうそろそろ行きますかね。
ブラウン・パラシュート #14
ちょっと説明のために:
2回ほど、フライで鯉を釣りに行ったことがある。その時作ったフライ。(ゴ…)
鯉を釣るのもなかなか難しかった。今度行くことがあったら、オマジナイを唱えながらフライを結んでみようと思う。
「王妃さま、民衆は今日食べるパンもないのです。」
「まぁ、パンがなければ…」
3月に入って早一週間。この2月から3月頭でほとんどの渓流では解禁になって、釣り場情報も入る様になった。けれども自分の釣りは、まだ始まらない。私には、この時期に釣りをするのに足りないものが二つもある。
この時期、渓流釣りは早くもピークを迎える。解禁になると釣り人の需要に応えるため、漁協が多くの魚を放流するからだ。放流する場所は、魚の運搬上の制約によって限られてくる。釣り人はその放流ポイントで、漁協の車が来るのを待つ。養鱒場で育てられた魚たちは川の流れを知らない。また水温の低さもあって、放流された魚たちは体力の消耗が少ない場所で四散することなく群れている。大勢の釣り人たちがそんな数少ないポイントで、捧げられし生け贄の争奪戦を繰り広げるのだ。戦い抜く勇気無き者、即刻退くべし!
漁協が釣り人のために魚を放流し、釣り人がその魚を得るために釣りをするのなら、漁協からバケツで魚を受け取ったら良いと言うかもしれないが、そこが釣り人が釣り人たるところで、それでは釣り人ではなくなってしまう。外国から輸入した貝類を日本の干潟に撒いて後日回収すると、それは『国産』として市場に出回るそうである。元が同じ魚でも、自分で釣れば、もうそれはスーパーのトレイに乗っている魚とは… (『釣り』の持つ暗黒面に気をつけろ。May the Force be with you. )
皆が皆、そんな魚を追い回している訳ではない。川にはそこで冬を越した魚たちも居る。もちろん連中も命の維持のために食事をしているので、釣りが成立する可能性はある。けれども、悪い条件の中でこの様な魚たちを釣るのには、『腕』がなくてはならない。
というわけで『根性』と『腕』を欠く私は、渓流に遅い春が来るまで待機中なのである。
先日、「中国広東省で穫れる」と書いたトンキン・バンブー(竹)。どんな風に栽培しているのか見てみたいと思って検索してみると… あった。
・Welli Tonkin Bamboo Export>>About us
・Welli Tonkin Bamboo Export>>>Photo Gallery
バンブー・ロッドは高い。そのため、その材料も特別なものであると思いたいところだが、これを見ると、まさに『南国の竹』である。このサイト、トンキン・バンブーの、ロッド材料以外の使われ方が分かり、なかなか面白い。結構、身も蓋も無い。
寒波が去って、今日は風もなく暖かな休日。師匠から送ってもらっていた青竹を割る。
一般的には、フライ・フィッシング用の竹竿にはトンキン・バンブーと呼ばれる竹を使うのだが、その竹は中国広東省で穫れるもので、多分、日本で入手したときには既に乾燥済みの『商品』なのだと思う。ハウツー本を読んでも乾燥の方法は書いてない。“丸”の竹を割って、直ぐに製作開始している。
身近な竹を穫って来て使う場合は、青竹の状態からどうするかという自由があり、工夫の余地があるわけで、日本の竹を使うことを選択したビルダーはそこから研究している。師匠から、割った方が乾燥が均一で早いというアドバイスをもらったので本日決行となった。更に細かく割る前に、ちゃんとした竹用鉈を入手するつもり。
この竹を使った竿が出来るのは一年後か、更に後か… 作っている時は結構しんどくて「出来たらもう暫くは作らんぞ」と思うのだが、完成から時間が経つと作る気になってくるのは『山登り』に似ているような。
私がフライ・フィッシング用バンブーロッド(竹竿)の作り方を教えて頂いた「Kawagarasu」こと千葉照雄氏が、今月出た『Fly Rodders』誌(2004年1月号)に大きく取り上げられている。特集のトップを飾る記事で、タイトルは『一週間で作るバンブーロッド』。写真も一杯で分かりやすいので、どうか本屋で手に取ってみてほしい。
千葉さんとの出会いについては、以前書いた様に、同じく『Fly Rodders』に載っていた1ページの記事が切っ掛けだった。
Kawagarasu ロッドとの出会い
あれから何年も経って、ようやく作り方の掲載となった訳である。このような記事が当時直ぐに載っていれば、悩みも少なかったのにと思う反面、もしそうだったならば、千葉さんや、そこから広がった出会いはなかったなと、以前文句を言ったのを今になって反省している。
千葉さんは岩手に住んでいて、私はまだ、実際に工房にお邪魔したことがない。製作中の写真や、改良された製作システムが見れたのは、なかなか良かった。でも私は、とても一週間で出来ませんよ。結局6ヶ月かかった私の立場は…
鈴鹿の山と言えば蛭。蛭と言えば…
泉鏡花の小説『高野聖』(こうやひじり)に、飛騨から信州松本へ向かう途中に蛭の大群に襲われる話が出てくる。高野聖とは、寄付を募るために全国を旅する高野山の僧のこと。この小説では僧が若いときに遭遇した、不思議な体験が語られる。泉鏡花の作品は既に著作権が切れているため、『青空文庫』でも公開されている。
泉鏡花 著 『高野聖』
話の舞台は岐阜県の天生(あもう)峠とされているのだが、天生峠は現在の白川村から河合村に抜ける峠で、飛騨から信州へ抜ける話とちょっと合わない。飛騨から信州というと、安房峠や野麦峠が思い浮かぶが、話の雰囲気ではもっと低い所をイメージする。
という訳で、舞台は漠然とした「特定できない飛騨信州の山の中のどこか」という印象で、自分の釣りに行く地域と重なっている。前に書いた様に、こちらではまだ蛭の被害にあった事は無いのだけれど、一生、そんな異空間に紛れ込みたくないものである。
『此の恐ろしい山蛭は神代の古から此処に屯をして居て、人の来るのを待ちつけて、永い久しい間に何の位何斛かの血を吸うと…』 嗚呼、怖い。
ところで、鈴鹿の山はどうしてそんなに多くの蛭が生きていけるのだろう。動物が多いからなのか。中高年登山ブームの昨今、一番多い動物は…
高校時代に何度も登った、鈴鹿の山での釣りを書いた本を読んだ。
『鈴鹿と山釣り』 石崎幸弘著 サンライズ出版
著者のホームページはここ。このページの、形ある「アナログ版」として本が書かれたということらしい。
話の舞台となる川は、愛知川上流の御池川、茶屋川、神崎川とその支流。山で言うと、鈴ヶ岳から御池岳、藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳の西側(滋賀県側)の渓流。山に登っていたときは三重県側からのアプローチだったので、滋賀県側は馴染みが無い。石榑峠で超えるか、高速でぐるっとまわって、永源寺側から行くことになるのだろう。
当時は渓流釣りを知らなかったので、そこで釣りが出来るかを考えたことは無かった。本を読み始めて、なかなか面白そうだなとちょっと思ったけど、鈴鹿の山は急激に立ち上がっていて、「沢登り・下り」が大変そうなのと、何度も本にも出てくるが 蛭がいっぱい だったのを思い出し、急激に熱が冷めた。
いつも行く飛騨や木曽の川では、不思議と蛭を見ない。連中にとって、鈴鹿はよっぽど住み心地が良いらしい。
“よゐ子”濱口のように『山の幸丼』にしようと思ったことは無いけれども、渓流でカエルに出会うことは多い。視界の中で岩の様なものが突然ドサッと動くので、ビックリする。
カエルに限らず、渓流で見かける動物や植物の名前が分かると良いと思うが、釣りをしているときはなかなか後で調べられるように記録しておく余裕が無い。来シーズンこそは覚えよう…
ところで渓流で見かけるこのカエル(ヒキガエルでよいのでしょうか)は、あまり逃げないのでちょっかいを出したくなるが、目の前に毛鉤をぶらつかせると大変なことになるらしい。お互い、気をつけましょう。
今日は社会派路線でいってみよう。
10月3日朝日新聞の夕刊に『アユに振られた夏』として、東海地区の鮎が不漁で関係者が苦慮している様子の記事が出ていた。自分の口に入る塩焼きの数から、今年の不漁具合はよく知っている。釣り道具の業界でも鮎はドル箱のはずで、この状態では売り上げも上がらないことだろう。
そんな訳で、鮎釣りを愛する人にとっても厳しいシーズンという話なのだが、この記事の中で非常に気になるのは…
『川で釣れる「天然アユ」の多くは、各漁協が4〜5月に稚魚を放流し、河川でコケを食べて成長したアユだ。(中略)天然アユには、秋に卵がかえった後、海へ下り、再び川をさかのぼる「遡上アユ」もある。』(2003年10月3日朝日新聞夕刊)
うーむ、朝日新聞…
「遡上アユ」が「天然アユ」なのは異論が無い様に思われるが、そうでない方の「天然アユ」の定義に疑問を持たない人は、釣り人か漁協組合員か、あるいは鮎を販売する立場にある人だろう。その人たちは、自分に対してそんな暗示をかける事情があったのではないか。
その理屈は多分、『「天然アユ」である「遡上アユ」に対して、外見や味で分けることが出来ないアユは「天然アユ」と呼んで何も問題ない。イケスで養殖してないし。』というところだろう。確かに区別して出荷することが出来ないのだからそれが現実的だ、と言えなくもない。が、それは『建前』というもので、「天然(アユ)」が「非天然(アユ)」よりも心理的に(その結果、金銭的にも)価値が高いということが背景にある。それに、「遡上アユ」の存在が困難な地域では、「天然アユ」は居ないということになってしまう。そこで、上の様な定義が共有されているのだろう。
そういえば、養殖魚の育て方の表現に、『天然仕上げ』というのがあるらしい。