(続き)
なんとか手ぶらで宿に帰ることは避けられたものの、たった1パイでは面目を保ったとは言えない。とても大きなビニール袋に入れた小さなアオリイカを宿のおばぁに渡すと、笑って「もっと釣ってきたら、一緒にイカ墨汁を作ってあげる」と言われる。イカ墨汁作るのには、あとどのくらい釣らなくちゃならないんだろう…。
自分の感覚では、新鮮なイカの一番美味しい食べ方といえば刺身じゃないかと思うのだが、沖縄の人にとってはどうも違うらしい。そういえば、泊港の市場でも生の白イカ(アオリイカ)は「おつゆ用」として売っていたし。はたして食事のおかずが増えるかどうか、それは今後の釣果に掛っている。
朝食の後、今度は海でのフライ・フィシングに挑む。と言っても、イシミーバイなどの「小物」狙いである。(もちろん、「大物」が掛るのは歓迎。) イシミーバイは以前も釣ったが、まだ食べたことことはない。美味しいらしいので、これも宿に供給して食べてみたいところだ。
さて、何処で釣るか。先刻までエギングをしていたところは、イカが居たということはイカの餌があった訳だから、他の魚にとっても悪い場所ではないはずだ。立ち込んでみれば、イカが居たのがどんな所だったのかよく分って一石二鳥。という訳で、また同じポイントに戻る。着いてみると、すぐ沖に船が二艘停泊していた。リーフの向こう側ではあるが漁船が来る場所なら釣りにも悪くなかろうと思ったが、後でその船が漁船ではないことが分ってきた。そこでダイビングをしているのだ。こんな近いところで? あと、カヌーやらシュノーケリングで岸の方に人がやってくる。そんな中で怪しい釣りをしていると、アウェー感たっぷりだ。この島の客ははほとんどダイバーである。基本、釣り人は金を落さないし、観光資源である魚を獲る訳だから、歓迎されているとは思えない。それに今、リーフに立ち込んでいるから、相当視線が痛い。でも続ける。
しばらく釣っていると、リトリーブに手応えが。イカ以外の最初の釣果はイシミーバイか? 寄せてくると、ん?
今迄に釣ったことのあるモチノウオの仲間の様な、違う様な。以前石垣島で、地元の人に食べるかなとモチノウオ系の魚を見せたが、食指が動かなかったみたいで「逃してあげましょうねー」と言われてしまったので、宿に持って帰って「この魚は食べない」と言われると無駄に命を奪うことになってしまうと思って放すことにした。(今写真を見てみると、ちょっと長細くてベラかなと思ったこの魚、メガネモチノウオ(ナポレオン・フィッシュ)の幼魚の様な気も どうもヒトスジモチノウオらしい。) イカに続き、魚もなかなか簡単には「おかず」にならないみたい。
(続く)
座間味島 LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
2014年 元旦
(続き)
翌日。5時に起きて、島に渡る前に買った餅の菓子で少し腹拵えをする。外は風が強い様で、ごうごうと音がしている。雨も降っているかもしれない。態々沖縄まで来て辛い状況で釣りをするなんてことやってないで、のんびり寝ているべきではないかという気持ちと、ここまで来て見す見す大物を釣る機会を逃がせば後悔するという思いの葛藤の末、合羽とライフジャケットを着込んで、未だ暗い中ヘッドランプの明りを頼りにポイントに向う。
前日の下見ではイカが釣れた痕跡はなかったが、とりあえず明るくなるまでは足元がしっかりしている港内でというのが無難だろう。闇に向ってエギを投げる。一投、二投、三投。このあたりで「沖縄だったらイカがバカバカと」という夢はやはり夢であったということになった。時折、微かに空を切り裂く音が聽こえてくる。どこかに他の釣り人が居るらしい。何を釣っているのか。彼は何か釣れているだろうか。
多少は移動しながら投げ続けて、もう何投目だか分らないが、ついにロッドに振動が伝わってきた。しかし、直ぐにそれは止んでしまった。リールを巻いてみると、エギが無くなっている。イカじゃなくて、何か歯の鋭い魚だったかもしれない。ダツかタチウオか。あるいはリーダーが根擦れで切れたのか。こうなったら何でもいい。何か掛れとエギを投げ続けたが、その後は生き物の手応えはなかった。
明るくなっても暫くそこで粘っていたが、反応したサカナの正体を明かすのは諦め、アオリイカが釣れていたポイントを目指す。海岸は少しだけ離してテトラが入れられていてエギを手前まで巻き寄せてこれないところが多く、釣りが成立する場所は意外と限られる。テトラの切れている場所でエギを投げる。投げるが、反応なし。実績ポイントだが、満潮直後で潮の動きがない時間帯なのが駄目なのか。エギの操作の所為か、パックロッドで距離が出てないからか・・・ 宿の朝食の時間が迫る。このまま手ぶらで帰るのは釣り人の沽券にかかわる。そのとき、重い手応えが。
ち、小さいな。でも昨日の人もこういうサイズだったし。数が釣れれば、宿の客一人に一皿ずつイカ刺付き朝食になるから問題ない・・・と続けたものの、その後はサッパリで、タイムアップ。
(続く)
(続き)
那覇市 泊ゆいまち LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
乗ることが出来る船の都合で那覇の泊港の魚市場などで時間を潰して、座間味島に着いたのはもう夕方だった。民宿にチェックインして、夕飯までの間に釣りのポイントを探しに出掛ける。明日は暗い時間からアオリイカ釣りを始めるつもりだから、日のあるうちに感じを掴んでおきたい。幸い、沖縄は日が沈むのがこちらより遅いので、まだ大丈夫だった。
まずは港の中から。沖縄のコンビニで去年買った本に紹介されているイカ釣りポイントに行ってみたが、墨痕がない。アオリイカなどを釣り上げたとき怒ったイカが墨を吐くので、コンクリートなどに残った墨痕はそこがイカが釣れる場所であるという有益な情報となる。それが無いということは……。いきなり、前途多難の気配。ひょっとしてシーズン外してる?
こうなると、港内以外のポイントも探さなくてはならない。港から離れて歩いていると、釣竿を持っている人を発見。しかも、どうやらエギングをしているみたいだ。良かった。イカは釣れるんだな。
近寄ってみると、その人は他の観光客に釣れたアオリイカを見せているところだった。こちらで言う春アオリの様に巨大ではなく、秋アオリのサイズだが、これくらいでも卵を持っているそうだ。沖縄で「シルイチャー」、「白イカ」と呼ばれているイカはこっちのアオリイカとちょっと違うのか、温暖な海では多様性を見せる様になるのか分らない。自分も釣りに来たことを伝え、ここでの釣りについて訊いた。親切な方で、快く教えてくれた。
さあ、明日の早朝から挑戦開始だ。
(続く)
今年のアオリイカ釣りは、春秋共に全然駄目であった。どっちも1、2回、潮回りや風の条件が良くない、日中にしか行けなかったにしても、年間0杯というのは情けない。今年も沖縄に行く計画があって、しかも本島から座間味島に渡ることになったので、「これはエギングの道具を持って行かなくてはなるまい。ここで一気に逆転。それはもうデッカい親アオリをバンバンとだな」ということになった。
自分の島での行動を釣りメインで考えて、イカだけじゃなくて、いまいち実釣と雑誌で仕込んだ知識のイメージが合わないイシミーバイ(や、何か分らないが大物対象)のフライ・フィッシングも再挑戦することにした。流石にこの時期は海パンでのウェーディングは辛そうなのでウェーダーも要るだろうしという感じで装備が多くなり、本島での行動日もあったので、邪魔な釣り道具一式は宅急便で宿に送って、また向うから送り返すことにしたい。座間味島への旅行者は大半がダイバーで、機材を宿やダイビング・ショップに送っておくというのは珍しいことではないらしく、おかげで数日前に宿へ問合せたらあっさりOKと言われた。(それは良かったのだが、そもそも宿泊予約が取れてなかったのにはビビった。)
こっちではもう陸っぱりのアオリイカ釣りシーズンは終ってしまっているけど、沖縄ではこれかららしいということはネットで調べた。問題は、沖縄でどんな風にアオリイカを釣るのか知らないことだった。港内ならこっちとあまり変らないと思うが、リーフ内は浅く、すぐ根掛りしそう。同じエギングでも、何か特別な工夫のあるエギを使うのだろうか。表層の釣りになる? 考えても分らないので、行っていろいろやってみるしかあるまい。
那覇市 農連市場 LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
(続く)
この盆休み、釣り旅行に出掛けた。といっても行くのはいつもの川なのだが。長く通っている川だけど、近年釣り人以外にとても人気が出てきて、このお盆は泳いだりバーベキューをする人達で「ごった返し」て、川沿いの林道は車だらけ。昼過ぎに到着した初日は釣りをするのを諦めたぐらいだ。
旅館に泊って釣りをしようとすると、朝にしろ夕方にしろ、食事の時間と釣りをしたい時間がぶつかってしまい、釣り場が近いのに意外と不自由なものだ。旅行二日目の朝も旅館の朝食を食べてから川に向ったので大して早く到着した訳ではないが、まだバーベキューや水遊びの連中はあまり来ていなくて、他の釣り人は「人込み」を避けて他の溪に行ったらしく、車止めのゲート近くに車を停めることが出来た。
自宅から出撃するときよりは早く川に着いたので、いつもより上流まで行ってから入溪する。さて、今日は先行者がいるのかどうか。明らかに釣り人だという車は近くになかったが、キャンパーが早朝からやっている可能性もある。
んー… 反応は渋い。昼までにやっと一匹。その後は忘れたころにぽつぽつといった感じで、サイズは20cm前後まで。まあ、遊んでくれるヤツが居るだけ有り難いと思うべきか。
そんな感じで釣り上って3時過ぎぐらいだったか、川の中央あたりを釣り上っていた自分の左手の川岸で少し音がした様な。顔を向けると、黒い物体が。くっ…熊だ! デカい! 相手の方が早く気付いて、反転して河原から走り去ろうとしているところだった。鼻の先からお尻まで150cmぐらいはありそうに見えたが、幸いにも至近距離での鉢合わせではなく10m程の距離があった。音をたてて繁みの中へ走って消えたが、その繁みからまた出てきてこちらに向って来たら、勝ち目なんてありそうもない。威嚇して遠くに追い払わなくては! お、大きい声を出すんだ! 「うー わう、わうぅ!!」
何故そこで犬の鳴き声なんだ(しかも洋風の)と訊かないでほしい。自分だって訊きたいぐらいだ。続けて、投げつけるべく足元に石を探すが、手頃の大きさのものが咄嗟に見つからない。なんとか拾って消えた茂みの先を目掛けて投げるが、石の飛んだ処は、自分から大して離れてない川の中だった。ビビって力が入り、握った石を離すタイミングがおかしい。二つ目の礫は岸まで届いてカチーンと音を出す。次はやっと繁みまで。ガサガサッ。奴を遠くに追い遣るためにはもっと距離を出さなくてはいけないが、(今にして思えば石が重過ぎて)何度やってもその程度しか投げられない。あまり意味無さそうなので止めた。
しばらくしてちょっと冷静になり、相手の方から(自分の進んでいる方向とは逆の川下に)逃げたのだし、わざわざ逆襲に戻ってきたりはしないだろうと釣りを続行し、ほどほどの時間で上った。キャンプ場の管理人に熊が出たことを話しておくべきだと思ったが、お盆だからなのか、管理人はもう帰った後であった。
ときどきニュースで、山仕事の爺さまが熊と鉢合わせになって取っ組み合い、撃退したという話が出るが、自分には無理だということがよくわかった。
二日目。篠島でまだ見ていない場所を自転車で時間まで出来るだけ廻ってから伊良湖に高速船で渡る。今回の旅は、旅先としては「篠島」だが、自転車趣味の立場から見れば渥美半島のサイクリングがメインとなる。
今回は伊良湖から三河田原駅までのコース。三個所に分断されたサイクリングロードも利用する。
LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
港すぐ横の道の駅を出発して伊良湖ビューホテルの横あたりまでは登りがキツく、既にバテバテ。坂を降りてサイクリングロードに入って快適・・・という感じでもなかった。海岸沿いのサイクリングロードなので波や風の影響か道に砂利や小石などが多いし、舗装もあまり良い状態ではない。車道から海岸へ向う道がちょくちょく交差しているので一時停止のポールが立っていて走り難い。
そうはいっても、綺麗な海を見ながら走れるのはやはり良い。さて、そろそろ何処かで昼飯を・・・と思うのだが、サイクリングロードを走っていて一般道沿いにあるであろう店から離れているので、腹減ったと思いながら赤羽港まで我慢。赤羽港の道の駅のレストランに行ってみると人が並んでいて、すぐに食べられそうにない。それではと他の店を探して、近くの「鈴木屋」に入る。だが、それが裏目に出た。ゴールデンウィークで人手が足りてないのか、客が多すぎるのか、食事にありつくまでに結構時間がかかった。
LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
前日に篠島の宿で魚料理を沢山食べたので、実を言うと魚以外の昼飯にしたかったのだが、鈴木屋さんは鰻をメインにした魚料理の店だったから(もう店を替える気力がなかった)、しらす天丼なるものを食べた。しらすを食べ続けた二日間だった。
道を間違えながら三河田原駅を目指す。駅が見えてきたら電車がもうホームに入っていて、慌てて自転車を乗せることを告げて乗りこむ。先に書いた様に豊橋鉄道渥美線はサイクルトレイン。そのまま乗せ、豊橋で自転車をたたんで名古屋鉄道に乗り換えて帰った。
LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
篠島は愛知県で唯一「日本の夕陽百選」に選ばれた夕陽の名所である。天気も良いし、観ない手はなかろうと時間を合わせて宿を出た。日の入りが夕食の時間直前だが、自転車の強みでギリギリまで粘った。高台から観るので坂道との戦いになる。一年前とは違い坂道対策に24段変速に改造済み・・・でも、やっぱり坂道は大変だ。
さすが篠島。夕食、翌日の朝食に、「しらす」や「じゃこ」が出た。しらすの料理は基本シンプルだけど、朝食に出た飛騨の朴葉味噌風に温める味噌和えが変っていたかな。味噌も篠島自慢の食品なのだそうだ。
公式 Twitter ページによると、篠島のゆるキャラ「しらっぴー」は恋人(?)の「しらっぴーな」と共に今年度も活動をしているらしい。4月4日以降書き込みが無かったので、てっきり倉庫行きかと思っていたのだが。この一月は中の人の引継ぎ&特訓期間だったのだろうか。
ゴールデンウィークに遠出をし損ね、また近場の旅行になってしまった。県内の旅行で地味な感じは否めないので、また自転車を持って行き、篠島から伊良湖に渡って渥美半島を走ってみることにした。
去年の日間賀島はこんもりした地形で、周縁の道で一周するのは良いが中に行くと坂が大変という感じだった。篠島はというと、高い所は細い未舗装の山道になってしまい、自転車で走るのには一層不向きである。こんなところにわざわざマイ自転車を持ち込むやつはそうはいないだろうと思いきや、結構居たな。
LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
愛知県内の有人の島は、佐久島、日間賀島、篠島の三つ。昨年、県の事業でこの三島のPRに力を入れていて島の名前をよく耳にした。その内、篠島には行ったことが(たぶん)無く、去年の日間賀島に続き、コンプリートを目指してゴールデンウィークに行ってきた。
県から予算が付いたのか、三島それぞれにゆるキャラがあって、佐久島は「あさりん」(大あさり)、日間賀島は「たこみちゃん」(たこ)、そして篠島は「しらっぴー」(しらす)という、それぞれの島の名産に由来するキャラクターなのだが、実物は島を訪れた際にも見たことがない。ひょっとすると、キャンペーンが終ったから県庁の倉庫の中なのかもしれない。
ということから分る様に、篠島の「売り」は、しらすなのである。やはり篠島に来たからにはしらすを食べなくてはならない。そういう訳で、上陸一発目の食事はこれ、生しらす丼。
LUMIX DMC-GF1 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH.
新鮮だからだろう。臭みも無くて、つるっと完食。