五年ぶりの釣行と、そのとき訪れた危機
環境の変化や不幸な出来事、そしてコロナ禍と、いろいろなことが重なってもう何年も釣りに行けていなかった。調べてみると、どうやら五年ぶりらしい。このところ、なかなかの激務で、それが片づいたら休みを取って釣りにいくというのを心の支えにやっていた。実はまだケリがついていないのだが、それを待っていると今期の渓流シーズンが終わってしまうので、リフレッシュのためにもその考えを実行に移すことにした。
そんなに間が空くと、フライの巻き方を忘れていたり、道具が何処にあるのか分からなかったりと、準備も大変。近所に釣具屋も無くなっているので、取り合えす持っているもので何とか準備をする。当日も、何処で日釣り券を買えるか探しながら向かうなど、時の流れを感じながら到着。

駐車スペースで、帰ってきた他の釣り人から情報を聞く。最近は人気で魚がスレていて厳しいらしい。まぁでも前はこの時期良い思いしたし何とかなるんじゃと楽観して入渓ポイントに歩いて向かう。
20分程、林道を上って川に入る。久しぶりで、なかなか感覚が戻らない。苦労しながら遡る。しばらくたって、こんなに足の裏に岩の感触をダイレクトに感じるものだったかなと思っていたら、なんと、ラジアルソール・タイプのウェーディングシューズの左脚側のソールが無くなっている! シューズが劣化して、加水分解を起こしているのだ。
出かける前には一応チェックしたつもりだった。しかし、林道を歩いて川でも負荷を掛けたことによって、急激に状況が変化したということか… でも、まだ釣り始めたばかり。やっとの想いでやって来た釣り場を、そう易々と撤退することは出来ない。何とか手持ちの物でこの状況を切り抜けようと、更なる分解食い止め防いてウェーダー(防水の胴長)の痛みを防ぎつつフリクションも得ることを期待して、ウェーダー・ベルトを靴の上から巻き付けた。

なんとか釣りを続行した。しかし考えが甘かった。右足側もどんどん壊れてきて、とうとう同じようにソールがとれた。ベルトは一本しかないので、手持ちのリーダー(細い釣り糸)をシューズに巻き付けて何とかしようとするが、さすがに無理がある。諦めて引き上げることにした。何て日だ。
しかし、どうやって車まで引き返すか。靴底無しでは、ウェーダーが擦れて痛んでしまう。そこで、それよりは金銭的な損失が少ないようにと、スパッツ(膝上までのゲートル)を靴底を包むように付けて歩くことにした。完全に変な人である。
以前より林道がよく整備されている事が幸いして、大きな苦労なく車に戻れた。スパッツもほとんど傷んでいなかった。更に幸運なことに、もう一つ古いウェーディング・シューズを持ってきていた(バッグに入れっぱなしにしていた)。それは見た目はボロボロだが、少なくとも分解しておらず、ソールが付いている。このままでは引き下がれない。それに履き替えて釣りを再開することを決意した。
もう一度林道を上り直すには時間が足りない。しばらく車で下って、今まで釣ったことがないポイントで入渓する。そこで辛うじて一匹だけ、釣ったと言うか、足下にポトリと落ちてウネウネしているイワナ君に出会えた。今日はこれで満足するしかない。怪我なく終われることに感謝せねば。早めに川を引き上げ、土産を買いながら帰った。
次はいつ行けるかな。そんなにブランクを空けずに再チャレンジしたいものだ。