ドレミの歌の憂鬱 3
(前回から続き)
日本では、シャープやフラット付きの音も、それらが付いていない音名・階名で歌う。音名唱法(または固定ド唱法)では、B♭は「シ」となる。それは「シ・フラット」では時間がかかり過ぎて本来の速さで歌えないからだが、BとB♭の区別がつかないのでは「音名を歌って覚えることで暗譜する」為には甚だ不都合である。
他の国ではもっと合理的なソルフェージュを行っているらしい。コダーイ・システムやトニック・ソルファ法では半音違う音にも別の発音を割り当てているので、日本の様に訳が分らないことにはならない。特に、英語圏で使用されているトニック・ソルファ法はとてもシステマティックで、白鍵の Doh(= ド) Ray(= レ) Me(= ミ) Fah(= ファ) Soh(= ソ) Lah(= ラ) Te(= シ) に基いて、黒鍵をシャープとして扱う場合は母音が “e" になった De(= ド#) Re(= レ#) Fe(= ファ#) Se(= ソ#) Le(= ラ#) 、フラットの場合は母音が “a" になった Ra(= レ♭) Ma(= ミ♭) Sa(= ソ♭) Ta(= シ♭)となる。
この素晴しいトニック・ソルファ法を使えば暗譜のための問題は解決!……なら良いのだけれど、残念ながら(私を含む大半の)日本人にとってはそうはならない。英語耳を持たない日本人には、上記のそれぞれの音の発音を使い分けることは困難なのである。そこで、区別して発音出来る様に各人工夫してしているのであるが、そうするとトニック・ソルファ法のシステマティックな利点が崩れてしまい、また、日本におけるトニック・ソルファ法の標準が無いという状態になってしまう。
(続く)