『ゲド戦記外伝』

すでに『前書き』から面白い、という本に出会うときがある。

前に書いたル=グウィンの『ゲド戦記外伝』がとうとう出たので借りて読み始め、今、収められている五話のうち三話読み終わったところ。短編集なので展開が早く、他の巻に比べて読みやすいと思う。ゲドの時代以外の話が多く、アースシーの世界のイメージが広がって楽しい。

ゲド戦記シリーズは児童文学にカテゴライズされてはいるものの、朝日や日経の書評に早速取り上げられていることからも分かる様に、大勢の大人も読んでいる。逆に、こんな本を読んでる子供って凄いと思う。ゲド戦記は、巷に溢れている様なソロバンずくの(貴方ではない人がガッポリ儲かる様に出来ている)『ファンタジー』ではない。それは『夢』に似ている。ル=グウィンが考えたというより、『無意識』からすくい上げてきた物語なのである。

『ゲド戦記外伝』の前書きには、筆者がアースシー世界と対話しながら物語を進めて行く様子が書かれている。この前書きを読むと、何故全巻読んでも色々な謎が解消されないのかが分かる。つまり『ねつ造』しているのではなく『観察』しているのだから、本人にも説明がつかない訳である。前書きの、最後のことばが愉快だ。

物事は変化するものである。
作者も魔法使いも必ずしも信用出来る者たちではない。
竜がなにものであるかなど、誰にも説明できない。