王子のキス
二つ蒔いたバオバブの種のうち片方は一月後に発芽したが、もう一つはその後も変化が無かった。それでも腐ってしまった様子はなく、固いままだ。これ以上遅く発芽したのでは、冬を越すことは出来ないだろう。そこで、より強力に発芽を促すことにした。
栽培キットの説明書には蒔く前に種を熱湯に浸けておけと書いてあったが、以前は種の皮をヤスリで一部削って水に浸けるようにとされていたみたいだ。種の中身が水に触れることで目を覚ますらしい。発芽を促すために種を水に浸けるのは他の植物でも行われる様だが、バオバブの種の皮はとても厚くて硬いので、ただ水に浸けただけでは効果が薄いということなのだろう。
発芽しない方の種にこの方法をとることにした。だがインターネットで観ているとその結果腐ってしまったという書き込みも多くて、リスクが高いらしい。小さな穴をあけてそのまま蒔けば良いのではないかと思って、ボトキン(千枚通しみたいなもの)を刺そうとしたが、固くて刺さらない。それでヤスリで削り始めたが、金工用の小さなヤスリではなかなか削れない。表面を削り取ったらボトキンの針先が効く様になったので二つ穴をあけて鉢に戻し、水をたっぷりやった。
数日後、種から根が出て来て、作戦は成功。龍の接吻になって、腐ってしまわなくて良かった。ただ、最初に蒔いたときにこうしておけば、今頃はずいぶん育っていたはず。