仲の良い犬、悪い犬
良く泊まる宿の犬には兄弟がいて、入漁証を買う店の近所に飼われていると訊いていたので、最近そこへ行くとついでに兄弟と思われる犬の顔を見てくる。

宿の犬とはかなり体格が違うので(特にウエストが)、こちらの方が弟だということにしている。性格は兄と似て友好的で、ご覧の通り、番犬としては役立っていない様である。
この日、別荘地横で釣りをしていると、鎖に繋がれていない、如何にも血統書付きの狩猟犬という感じの白い犬が駆け寄ってきて、この『何だか不審な行動をしている人物』に向かって威嚇を始めた。川の中まで入ってくる様子は無かったので無視して釣りを続けると、暫く吠え続けた後で引き返して行った。
待ち合わせの時間が来たので、ちょっと別荘地を失敬して横切らせてもらおうと川を上がると、それを先程の番犬君が察知して飛んできた。牙を剥き激しく吠えたて、今にも飛びかからんという感じで距離を詰める。「(やれやれ、こいつとやり合うとなると、こちらも相当の深手を覚悟しなくてはならないな。)」と考えながら林道へ少し急ぐと、相手は距離を保ったまま付いてくる。背中を見せてもお尻に噛み付かれないと分かれば、これ以上刺激せずに『三十六計逃げるに如かず』だ。奴は侵入者の敷地を出て行く意志を確認すると、深追いせずに他の侵入者の排除に向かった。こちらは憎たらしい程に優秀な番犬である。ともあれ、修羅場にならずに済んで良かった。