永遠のカーティス・クリーク

 

「そういえば、あの人は最近どうしてるんだろうか」と検索したら、またしても寂しくなる情報が表示された。田渕義雄さんの訃報である。

少し山に登っていた高校生の頃から、ずっとこの人の文章に触れてきた。そしてこの人の本でフライ・フィッシングを学んだ。その本に書かれれていることはその時点で既にフライ・フィッシング技術の最新トレンドからみると時代遅れだったかもしれないが、難しいことは出来ない不器用な自分には、この本や芦沢一洋氏の『ベストフライフィッシング』が教科書だった。(そして、今でもそのままだ。)

アウトドアについてにしろ、釣りについてにしろ、技術的なことも参考になったが、この人の生きるスタイルに惹かれていた。田渕さんの文章に「たかが釣りのために……ときみは思うかもしれない。しかしきみだって、たかが死んでいくまでの1日を、今日もきみなりにヒマつぶししたにすぎないじゃないか。」というのがあって、それを時々思い出した。釣りの本にこんなこと書く人はそうそう居ないだろう。もちろん、命を軽んじて言ったのではなく、一生懸命生きた人の言葉だからこそ素敵に響く。もう死ぬまでの暇つぶしではなくなったけど、きっとあの世でも楽しい釣りをしてるに違いない。