ウクレレの押弦の考察(4) カルレバーロ奏法から得たヒント
(続き)
『ギター演奏法の原理』は当然、ギター演奏について分っていないと内容がよく理解出来ない。だから動作の各論についてはあまり分らないけれど、力の使い方について総論的には「指だけを使うのではなく、腕などの強い筋肉を持つ身体の部位を使用せよ」、「そのためには『関節の固定化』を利用せよ」ということの様だ。『関節の固定化』とは、ある関節を動かなくして他の部位の動作や動きを伝える“媒介”の役割を果す様にするということだと言う。
親指と他の指を対抗させ摘む力で押弦をすれば、これは指の力で行っていることになる。押弦に上の方針を適応するなら、手首や指の関節を『固定化』して、例えば腕の力で引っ張れば良い。このとき、親指は押弦に関して補助的な働きしか行わない。だから他の指の反対の位置にする必要はない。腕の力を効率良く伝えるためには、手首はなるべく曲げない方が良いだろう。指は、指先が指板に垂直に近くなる様にする。
手で握りこむ力や指で摘む力で押弦しないとしても、腕の力を伝えるために指の関節を固定化しておくためにも力は必要である。それで疲れてしまうのでは意味がない。ここで、先に書いた握力について思い出してほしい。握力には「クラッシュ力」、「ピンチ力」、「ホールド力」と三種類あるという話であった。「握ったものを保持する力」であるホールド力というのは、つまり関節を固定化した状態を保つ力だと思う。例えば(それ程重くない)鞄を長い時間持っていられる様に、ホールド力は持久させることが出来る。だから、指の関節を固定化させる力の使い方の方が、クラッシュ力やピンチ力によって指自体で押弦するよりも疲れないはずだ。
さて、上手いウクレレ奏者は実際にこの様な押弦を行っているだろうか。この推測、外見からは結構良い線いっている気がする。 左手の親指は大抵、他の指よりかなりヘッド側にあることが多く、ネックに軽く添えているだけに見える。この形は両側から押して挟むのには効率が悪いはず。手首もあんまり曲げてない。ただ、「指の力は要らない」という話は聞くけど、「腕で引っ張っている」というのは聞いたことがない。ちょっと無理矢理考えると、腕にとっては押弦に必要な力は大きくないので、あまり力を使っている自覚がないのかもしれない。
(続く)