泣き尺

渓流釣り師にとっての「大物」の目安として、「尺物」という言葉がある。体長が1尺(=30.3cm)を越えるという意味だ。「大物」の定義は魚の種類によって違い、例えばブラックバスが30cmだったとしても、そいつは大物とは見なされない。その魚のよく釣れるものに比べて大きく、なかなかお目にかかれないサイズということになるのだろう。大物の魚を表す言葉は面白くて、アイナメの場合、「ポン級」という。ビール瓶の様だというところから来ているらしい。

川にとどまって生きている渓流魚も、理屈の上では尺を越えてどんどん大きくなることが出来るはずではあるが、川に十分な餌があり、他の魚の競争に勝ち続けてそれを確保した上、外敵(主に人間)をかわし続ける必要がある。1尺とは人間の感覚の都合によるサイズだけども、「越え難い壁」となかなかマッチしているらしい。それで、自分が通う川ではなかなか出会えない。いや、正確に言うと、その川に居るのだが、他の釣り師との競争に負けて、私が釣ることが出来ていないだけらしいが。

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昨日は、近年稀に見る釣果を上げた日であった。支流の小渓流だったのに、条件が良かったのだろう。数も良かったが、サイズも良い。中でも一番大きかった魚がこいつ。

岩魚




自分は「尺ハンター」ではなく、釣れる魚は20cmを越えればまあ満足という感じなのだけれど、やっぱり大きいのが釣れれば、それはそれで嬉しい。とっても嬉しい。「おっ、これはいったかな?」と思ったが、ぎりぎり下回っている様だ。岩魚はひょろっと長くなることも多いけど、こいつは体高もあってなかなか立派。無粋なメジャーをどけてもう一枚写真を撮ろうとしていたら、自分でフライを外して帰って行ってしまった。


※ 泣き尺:「尺物」にあとちょっと届かなかった魚のこと。泣いているのはもちろん、「尺物」を釣り上げることを夢見ていた釣り人である。