静かで騒々しい部屋
その日、ホーチミンは暑かった。多分いつでも暑いのだろう。
観光客は普通、オプション・ツアーに参加して郊外に行っているか一生懸命買い物に励んでいて、日中はホテルになんか居ないものだろうが、喧しくて空気の悪い、横断歩道など全く役に立たないこの街を乗物にも乗らずに歩き回ってバテたので、ホテルの部屋に戻って少し休むことにした。
ホーチミンは夜になっても交通量が減らず、通りに面した部屋では騒音でなかなか寝られないという話も聞くが、そのとき泊まっていた部屋は静かな中庭側で、快適だった。
部屋に戻って暫くすると、大音量の音楽が響き渡った。ナンダ?ナンダ?と部屋から出てみると、中庭でパーティーをしており、どうやら結婚披露宴の様だ。こちらの披露宴は生バンドの演奏付きらしい。
最初はプロが歌っている様だったから、まだ良かった。途中から『カラオケ』ならぬ、生バンド演奏『のど自慢大会』の様相を呈してきて、順番が後になる程アルコールが効いてきているのか、凄まじい歌唱力に。とても休息にならなくなって、たまらず灼熱の街中観光に戻った。
他のホテルのことは分からないが、REXでは自分が泊まっている間、毎日何組もこんな結婚披露宴が行われて、新郎新婦が招待客と談笑する様子をよく見掛けた。